久しぶりにハマった香港映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』が面白い3つの理由とは?

2025年1月から日本各地で上映中の映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』。

 

1990年代、香港の街並みやカルチャーに魅了されたわたしにとって、久しぶりに観た香港が舞台の映画です。

 

この映画のために緻密に再現された”九龍城砦”で繰り広げられる新旧の香港スターの激しいアクションにもう釘付け!!

 

でも2月から5月にかけて、字幕版と吹替版を合わせて3度観に行ったのは、

「アクションシーンをもう一度観たかったから!」

だけではありません。

 

劇中における登場人物の人間関係や、かつて「魔窟」と呼ばれた九龍城砦の住人たちの日常をもっと注意深く観てみたかったからです。

 

ここからは、この作品の魅力を

「九龍城砦での生活」

「人間関係」

「アクションシーン」

の3つに注目してご紹介したいと思います。

 

すでにご覧になった方はもちろん、これから観たいと思っている方にも読んでいただけるよう、結末がバレないようにお話します。

 

しかし、本編の内容や人物の相関関係に触れているところがありますので、ご注意ください。

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』とは

主な登場人物


陳洛軍(チャン・ロッグワン)
演者→-レイモンド・ラム(林峯)
この物語の主人公で、海を渡ってやってきた密航者。


龍捲風(ロン・ギュンフォン)
演者→ルイス・クー(古天樂)
九龍城砦の一切を取り仕切るリーダー。かつて九龍城砦でおきた抗争を経て、いまに至ります。


信一(ソンヤッ)
演者→テレンス・ラウ(劉俊謙)
龍捲風が最も信頼する若者。
バタフライナイフを武器に九龍城砦の危機に立ち向かいます。


四仔(セイジャイ)
演者→ジャーマン・チョン(張文傑)
九龍城砦きっての腕利きの医者。中医学と西洋医学の両方に通じ、武術にも長けています。


十二少(サップイー)
演者→トニー・ウー(胡子彤)
虎兄貴の組織の若頭。10代の頃、龍捲風に助けられた経験をもつ。日本刀を持って闘いに挑みます。


大ボス
演者→サモ・ハン(洪金寶)
油麻地(ヤウマテイ)のフルーツマーケットを縄張りにする黒社会のボス。


王九(ウォンガウ)
演者→フィリップ・ン(伍允龍)
大ボスの部下。体を鋼のように固くする”硬直技”の使い手です。


秋(チャウ)兄貴
演者→リッチー・レン(任賢齊)
九龍城砦の大地主で、龍捲風とは義兄弟の仲。かつての抗争の最中、妻子を亡くしました。


虎(タイガー)兄貴
演者→ケニー・ウォン(黃德斌)
廟街(テンプルストリート)を取り仕切るボス。かつて九龍城砦の危機に立ち向かい、右目を負傷しています。


陳占(チャン・ジム)
演者→アーロン・クォック(郭富城)
かつて九龍城砦を束ねていた雷震東(ロイ・ジャンドン)の懐刀。「殺人王」と呼ばれ、恐れられていました。

あらすじ〜イントロダクション〜

舞台は1980年代の香港。

主人公の陳洛軍は、密入国者としてこの地にやってきました。

身分証を手に入れたい洛軍は、黒社会の大ボスが仕切る”賭け試合”に挑み、勝利します。

 

しかし大ボスらに軽くあしらわれ、身分証はもとより金さえも渡してもらえない状況に追い込まれてることに。

 

怒った陳洛軍は、大ボスのアジトから大金が入っているとおぼしき袋を持って逃走し、

ついには、九龍城砦へと駆け込みます。

 

しかし、そこでもよそ者として追われることとなり……。

さて、陳洛軍の運命やいかに!?

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』が面白い理由 3選

 

 

ここからは、わたしが感じたこの映画の魅力を
3つの点に注目してご紹介します。

 

1.安住の地か無法地帯か?九龍城砦の生活に注目!

この映画は、香港にあった九龍城砦を中心に描かれています。

 

1993年に解体された城砦を忠実に再現したセットで撮影されました。

 

そこでの生活をも再現した空間を見ているうちに、わたしもここの住人になったかのような錯覚に陥ってしまうから不思議です。

 

 

さて、ここからは物語の主人公・陳洛軍や龍捲風の動きを追いながら、九龍城砦の日常生活に迫りたいと思います。

 

 

九龍城砦の龍捲風

大ボスの一味に追われ九龍城砦に無断侵入した陳洛軍。

しかしその孤独な身の上を知った龍捲風のはからいで、ここに住むことを許されます。

 

龍捲風は眼光鋭い城砦のボスで、いつもタバコをくわえている姿が印象的。

理髪店の店主でもあり、九龍城砦の自治会長のような役割も担っているようです。

 

店を訪れる老人の会話に付き合ったり、住人同士のトラブルを仲介したり。

じつは面倒見のよいリーダーであり、懐の深さを伺わせます。

 

一見すると「恐い人」ですが、じつは人情に厚い人なのです。

なにをしていても大人も魅力に溢れていて、ほんとに素敵!

思わず”惚れて”しまいました!

 

九龍城砦の陳洛軍

ここまでの闘いで大怪我を負った陳洛軍は、医者である四仔の治療を受けた後、城砦の中で働き始めます。

 

調味料の配合を覚えたり、少女と一緒に魚のつみれ(魚蛋)を作ったり。

またあるときは、龍捲風の理髪店にガスボンベを運んでいました。

 

どうやらいくつかの仕事を掛け持ちしていたようです。

 

ある日、寸暇を惜しんで働く洛軍を見かねて、龍捲風は叉焼飯をごちそうします。

 

叉焼を夢中に頬張る洛軍をみていると、ちょっぴり羨ましい。

こちらまで食べたくなってしまう……。

 

また、あるトラブルに憤慨した陳洛軍は、信一・四仔・十二少と共闘。

次第に意気投合した彼らと絆を深めていきます。

 

九龍城砦の人々と暮らすうちに、陳洛軍はずっとここに住みたいと思うようになります。

 

天涯孤独の陳洛軍が、やっと安住の地を見つけたのでした。

 

作品に見る九龍城砦の日常

九龍城砦はいくつものビルがくっついてしまったような複雑な建物。

日光があまり差し込まない区域のなかで、城砦の住人たちはその中にある店舗で働きながら暮らしていました。

 

この混沌とした空間に、衣食住に必要なものすべてが揃っていたのです。

 

不法移民をはじめ、さまざまな理由で行き場のない人々がやってくる九龍城砦。

だから困っている人を見過ごさない。

映像からも、みなが互いに助け合って生きていることがよくわかります。

 

ときにはたくさんの住人がひとつの部屋に集まって、小さなテレビを一緒にみることもあったようです。

その様子もじつに楽しそう!

 

ここは、彼らにとっては何不自由ない「楽園」のような場所なのですが……。

 

しかしその一方で、この映画では九龍城砦の闇の部分も描かれています。

 

詳しい内容は避けますが、かつてここが「悪事の温床」や「無法地帯」と呼ばれていたことに改めて気づかされます。

 

もしかしたら、現実の九龍城砦でも龍捲風のような頼もしいリーダーが存在し、砦の治安を守っていたのかもしれませんね。

 

 

2.信頼か対立か?4人の兄貴(ボス)の関係性に注目!

物語が進んでいくうちに、龍捲風、秋兄貴、虎兄貴や大ボスらの過去や現在の関係性がわかってくるのも、おもしろいです。

具体的な立ち位置はわかりませんが、4人は30年前、九龍城砦で起きた抗争を生き抜いた面々だということに間違いありません。

 

映像から見えるボス世代の関係性

雷震東一派との抗争を経て、九龍城砦のリーダーの座についた龍捲風。

 

その後、九龍城砦の大地主である秋兄貴は、砦の一切を龍捲風に任せている様子。

どうやらこの2人、義兄弟のようです。

 

龍捲風は秋兄貴の自宅を訪ねた時、秋兄貴の妻子に線香を供えています。

龍捲風は、妻子が殺された経緯を知っているようなのですが……。

 

龍捲風はまた、大ボスの家も訪ねています。

陳洛軍が九龍城砦に持ち込んだ袋(じつは中身は”白い粉”)に金を添えて、返しにきたのです。

 

「これで許してやってくれ」という龍捲風に対し

大ボスは隠し持っている武器に手をかけて、龍捲風を警戒します。

……いったい何故?

2人の関係がとても気になります。

 

虎兄貴は決して多くを語りません。

しかし、龍捲風が助けた十二少を手元に置き、九龍城砦への出入りも許しています。

このことから、虎兄貴の優しさや龍捲風との絆の強さがわかります。

 

また回想シーンでは、龍捲風と「殺人王」陳占との関係も描かれています。

 

対立していた雷震東の右腕である陳占とも交流があったとは!

一体どのような間柄だったのでしょう?

興味津々です!

 

 

物語を動かすボス世代の対立

しかし、秋兄貴は妻子を殺害した敵(かたき)の息子を探し当て、殺害を決意。

そのことで、龍捲風との信頼関係に亀裂が生じます。

敵はすでに龍捲風が討っていたのに、秋兄貴の心の傷はまだ癒えていなかったのです。

 

秋兄貴の話を聞き、かつての抗争で右目を失った虎兄貴も黙っていない!

仕返しをしたい相手は同じ……!

秋兄貴とともに九龍城砦へ向かいます。

 

九龍城砦の一切を取りしきる龍捲風と城砦の大地主である秋兄貴らの対立に、やがて大ボスも加わることに。

 

この対立を利用して取り壊しが決まった九龍城砦を手に入れ、解体時に生じる利益で一儲けしようと考えたからです。

 

秋兄貴の執念と大ボスの欲望が混ざり合って、再び九龍城砦に抗争の火種が生まれます。

 

そして若い世代も、否応なしに巻き込まれていくのです。

 

平和だった九龍城砦が”戦場”へと変わりゆく中、龍捲風や彼を慕う若者たちは九龍城砦の日常を取り戻すことができるのでしょうか?

 

手に汗握る展開に、ドキドキが止まりません。

 

 

小説を読めばわかる?ボス世代の物語

この映画の原作は、香港の小説家、余兒(ユー・イー)の小説『九龍城寨』。

小説は3部作で構成されています。

 

今回の作品は第1部にあたる『九龍城寨之圍城』を映画化したもの。

原作3部作の中では、かつての抗争を描いた「前日譚」も描かれているようです。

 

いつか映像化される日を、心から楽しみにしています。

 

 

3.若手かベテランか?胸熱なアクションシーンに注目!

この映画は、息もつかせぬ激しいアクションシーンも魅力です。

 

走行する二階建てバスの中での格闘は迫力満点!

 

配線も配管も丸出し!

まるで迷路のような九龍城砦を、縦横無尽に移動しながらのアクションからも目が離せません!

 

また、信一の華麗なバイクアクションや、洛軍、四仔、十二少との共闘も見どころ。

息のあった格闘シーンに注目です。

 

さて、ここからはわたしが印象に残った3つのバトルシーンをご紹介します。

 

陳洛軍VS龍捲風

大ボスの一味に追われ九龍城砦に逃げ込んだ陳洛軍。

 

そんな陳洛軍に対し、

突然の侵入者は許せない!

とばかりに懲らしめたのが龍捲風でした。

 

それまでの格闘では負け知らずだった陳洛軍が、龍捲風の前では簡単に吹き飛ばされてしまうのです。

 

「竜巻」の異名をもつ龍捲風。

その拳は洛軍をまったく寄せ付けない!

ついには洛軍を戦闘不能にまで追い込むのです。

 

これは龍捲風の初登場シーンなのですが、彼の立場と強さを印象付ける衝撃的な闘いでした。

 

龍捲風VS陳占

これは回想シーンで登場した過去の闘いです。

九龍城砦にある廟の中で対峙した2人でしたが実力は拮抗。

 

二人はもともと敵対する仲ではなかったのか!?

互いにどことなく戸惑う様子が見られ、なかなか決着がつきません。

ついにはふたりとも目隠しをして闘うことに。

 

勝負の行方はここでは書きませんが、辛い結果になったことは確かです。

 

なぜ闘いに至ったのか?

このシーンを見ていると、その真相を知るのが少しだけ怖くなりました。

王九VS陳洛軍・信一・四仔・十二少

これは九龍城砦をめぐる最後の闘いです。

 

体を鋼のように固くする硬直技を得意とする王九に、九龍城砦の住人である4人が挑みます。

 

それぞれが全力を振り絞って王九に向かっていきますが、刃物や拳はもとよりどんな攻撃も、王九にはまったく通用しません。

 

それでも諦めず攻撃を続ける4人に迫る命の危機!

さて、その結末は……。

感動のラストにつながる名シーンです。

________________________________________

以上、私の心に残った3つのシーンをご紹介しました。

 

この他にも心に残るバトルシーンが満載の本作。

 

若手のはつらつとしたアクションに応えるように、ベテランが貫禄たっぷりの技を繰り出す場面に胸が震えます。

 

また、若者同士の力のこもったバトルや、ベテラン同士の迫力満点の格闘シーンも魅力的です!

 

素晴らしいアクションシーンの数々は、男同士の信頼や友情が織りなす物語とともに、私の胸に深く刻まれています。

まとめと感想〜懐かしい香港に触れて〜

 

ここまで、この作品の魅力を

「九龍城砦での生活」

「人間関係」

「アクションシーン」

の3つの観点からご紹介しました。

 

この作品は、わたしにとって久しぶりに”どハマり”した映画。

それは、かつて何度も訪れた香港が舞台だったからに違いありません。

 

字幕版では広東語独特の響きが懐かしく、わかる言葉やキャラクター名を声に出して発音するのがうれしかったです。

また吹替版では、言葉がすんなりと入ってくる分、内容をじっくりと噛み締めながら観ることができました。

 

さらに映画の中で流れる当時の流行歌は、日本人にも親しみがあるメロディーでびっくり!

ネイザンロードのネオンや二階建てバスを見て、突然、香港を旅した頃の記憶もよみがえりました。

 

この映画を観て

言葉や文化も、光も闇も、いろいろ全部ごちゃまぜだった香港を再認識。

「あの頃の香港の魅力は、混沌の中に詰まっていたのだな」と改めて感じました。

 

こちらの記事を通してみなさんにも、『トワイライト・ウォリアーズ』に興味を持っていただけたら嬉しいです。

 

作品の詳しい情報は公式サイトをご覧ください。https://klockworx.com/movies/twilightwarriors/

Follow me!