【作品のまとめと感想】Thunderbolt Fantasy 殤不患( しょうふかん)にまつわる3つの謎とは?

人形劇というにはあまりに斬新すぎる手法で制作されているThunderbolt Fantasy(サンダーボルト・ファンタジー)シリーズ。

 

わたしはシリーズ放送開始からこれまですべてリアルタイムで視聴してきた。

 

そんなわたしがThunderbolt Fantasyシリーズの魅力を知ってもらいたいと、これまでのストーリーを紹介しようと考えた。

 

そのためにはこの作品のメインキャラクター、殤不患の動きを追うのがいちばん!

 

しかしこの殤不患、かなり謎の多い人物。

 

そこで少しテーマを変え、殤不患にまつわる3つの謎を取り上げながら物語を振り返ることにした。

 

※以下は発表された作品をすべてみたうえでの考察となっている。ストーリーのネタバレが含まれるのでご注意いただきたい。

 

Thunderbolt Fantasyとは

台湾伝統の人形劇である「布袋劇(ほていげき)」をベースにテレビ人形劇を製作する「霹靂國際多媒體股份有限公司(略称:霹靂社 よみ=へきれきしゃ)」。

 

特撮技術を使った人形劇の作品に感銘を受けたニトロプラスの虚淵玄(うろぶち げん)が日本にもその素晴らしさを伝えたいと立ち上げたプロジェクトの作品群のこと。

 

これまでの作品はテレビシリーズ3本とその間をつなぐ劇場版の2本。あわせて5本。またテレビシリーズ最新作(第4期)が制作されることも発表されている。

 

イントロダクション

この物語の舞台は「萬輿(ばんこう)」という国。この国ではかつて魔界からの軍勢が襲来し大きな戦となった。その攻撃に対抗するため、人々は神仙から教えを受けさまざまな武器を作った。

 

それらの強力な武器の数々は「神誨魔械(しんかいまかい)」と呼ばれた。人々は「神誨魔械」を使い魔界の軍勢を退けた。しかし激しい戦闘のあと「鬼歿之地(きぼつのち)」という呪われ荒れ果てた地が現れ、国を東西に隔ててしまう。

 

その後「鬼歿之地」によって往き来が途絶えた東西の地域は、それぞれ「東離(とうり)」「西幽(せいゆう)」として独自の国家を築くことになる。

 

それから200年後。西幽から「鬼歿之地」を渡り東離へとやって来た男がひとり。懐には「魔剣目録(まけんもくろく)」、腰には「拙劍(せっけん)」を携えている。そう、彼こそが殤不患である。

 

この物語は殤不患がひとりの少女を助けたことから動き始める。

 

殤不患にまつわる3つの謎

①なぜ東離にやって来たのか

殤不患はなぜ東離にやって来たのか。それを知るにはまず、殤不患が西幽でどのように生きてきたのかをお話しなくてはならない。

 

殤不患は西幽で聖剣や魔剣のたぐいを集めていた。これらの武器が戦争や反乱に利用されて多くの命がうばわれ、争いごとが繰り返されることが許せなかったからだ。

 

しかし図らずもこれらの武器を欲する邪教結社から命を狙われてしまう。

 

さらに戦争に使われた聖剣を宮殿から盗んだことで西幽の帝からも追われることになった。

 

それでも殤不患は剣の収集を止めなかった。自分の信念を突き通したのだ。

 

殤不患にはこころざしを同じくする3人の仲間がいた。

 

ひとり目は収集したたくさんの剣を封印し携帯できる巻物「魔剣目録」を作った老人、天工詭匠(てんこうきしょう)

 

ふたり目は、琴の音撃と琴に仕込んだ刀で戦う女性。殤不患と旅をともにしている睦天命(むつてんめい)。

 

最後のひとりは、魔性の歌声と琵琶の音撃で敵を討つ。途中から仲間に加わった青年、浪巫謠(ろうふよう)。

 

殤不患も鍛え上げた武術で果敢に追手に立ち向かう。

 

しかし、邪教結社の教祖である禍世螟蝗(かせいめいこう)との戦いで睦天命は失明をするほどの大けがを負ってしまう。

 

このことに深く心を痛めた殤不患は、これ以上自分の意向に仲間を巻き込みたくないと、彼らとの別れを決意する。そして「魔剣目録」をもって西幽から旅立つのだった。

 

「魔剣目録」さえなければ……。

 

もしかしたら殤不患は「魔剣目録」を手放せる安全な場所を探すため、東離に向かったのかもしれない。

 

②なぜ「魔剣目録」の中身を使いこなせるのか

「魔剣目録」には殤不患が集めた魔剣・妖剣・聖剣・邪剣が収められている。西幽を出た時点で三十六振り。その後いくつか増減して現在は三十七振りである。

 

たちまち妖魔を封印してしまう聖剣がある一方で、何も知らずに使ってしまったら命が危険にさらされる武器もある。

 

殤不患はこれらすべての剣の名前、使い方、効果を熟知している。

 

しかし剣についての知識ならば、邪教結社の一員である蠍瓔珞(かつえいらく)ももっていた。

 

実は「魔剣目録」に封印されている武器を取り出せるのは殤不患だけではないのだ。

 

蠍瓔珞は殤不患から持ち去った魔剣目録の切れ端から二振りを取り出している。

 

奪い取った「喪月之夜(もづきのよ)」や「七殺天凌(ななさつてんりょう)」について知っているようすだった。

 

殤不患の旧友であり西幽の元将軍、萬軍破(ばんぐんは)。彼は「魔剣目録」から一振りを取り出し、妖魔・照君臨(しょうくんりん)に立ち向かった。

 

しかしその剣を手にしたとたんに、落としてしまった。握っていることすらできなかったのだ。

 

萬軍破はもう一振り、さらにもう一振りと剣を取り出す。そしてさいごに手にした剣は彼にとって、とても危険なものだった。ついに萬軍破は照君臨に追いつめられてしまう。

 

まさにそのとき殤不患が颯爽とあらわれ、あざやかな身のこなしで萬軍破を救ったのだった。

 

そして萬軍破がはじめに落とした剣を拾って使いこなし、照君臨を追いつめる!!めちゃくちゃカッコいい。

 

どうやら「魔剣目録」にある武器は、だれにでも扱えるものばかりではないようだ。使い手の力量が必要な剣もあるのだ。

 

殤不患は「魔剣目録」に収蔵されている武器のことをよく知っていて、より良く使いこなせる高い能力をもっている。

 

だからこそ安易に目録から武器を取り出して使わない。これらの剣が本領を発揮できる場面をこころえているからだ。

 

それにしても殤不患。その知識と強さはいつどこで身につけたのか。ほんとうに、謎です。

 

③なぜ「拙劍(せっけん)」をつかっているのか

「魔剣目録」の中にある武器を自在に使いこなすことができる殤不患。しかし彼が愛用するのは常に腰にある「拙劍」である。

 

この「拙劍」は、実はただの木刀に塗料を塗ったもの。「魔剣目録」という強力な武器を手元におきながら、みずからは木の棒に全身の「気」を込めて敵を倒していたのだ。

 

気功術を使い木刀で人が斬れるということは、殤不患にとってはどんなものでも武器になるということ。これまで殤不患は拙劍の他、木の枝、植物のつる、竹を使って戦ってきた。あるときはみずから被っていた笠を投げてどどめをさしたことも……!!

 

「何?木の棒を使って戦っていたの?すごい!!」

 

劇中でこれを知ったときはとても驚いた。拙劍が木刀だとわかったシーンでは、殤不患がとてもカッコいい!!ここはぜひぜひあなたの目で確認してほしい。

 

でもなぜ木刀を使っているのか。本人いわく

 

人を殺すことが簡単になってはいけないから。

 

とのこと。

 

簡単に人を殺す?まさか殤不患がそんな経験をしたのだろうか?

 

誤って人を殺してしまったということか?それともとてつもなくショッキングな出来事に遭遇したのか?

 

テレビシリーズの第3期では、殤不患の過去について仲間が言及するシーンがありドキッとした。もちろん、殤不患から真実を話したりすることはなかったのだが……。

 

この先殤不患の過去を知れば、彼が気力をけずってまで拙劍で戦う理由がわかるのかもしれない。

 

作品をより楽しむためのアドバイス

人形劇に抵抗があるかたにこそみてほしい!

シリーズの原案・脚本・総監修をしている虚淵玄はアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』、特撮『仮面ライダー鎧武/ガイム』などの人気作品で知られた人。虚淵玄が関わっていることで、この作品が気になっているというかたも大勢いるはず。

 

それでも「人形劇はどうも……」と敬遠しているかたがいるのではないだろうか?わたしはそんな人たちにこそThunderbolt Fantasyシリーズをみてほしいとおもっている。

 

なぜならこの作品は「ゴジラ」や「ウルトラマン」などのような特撮技術を用いてつくられているから。

 

わたしたちが幼い頃に親しんできた人形劇とは明らかに違うものであることをぜひ知ってほしい。

 

まず日本で完成した脚本をもとに台湾で映像が撮影される。

 

作品に使われている人形の大きさは約90センチほど。1体の人形をひとりで動かすのが基本。人形の体のなかにすっぽりと右腕を入れて、身体全体を使い操作する。

 

人形がまるで生きているかのように動くさまは圧巻だ。

 

高い位置にミニチュアセットを作り、その下で人形を動かす。

 

戦闘シーンでは本物の水や火薬を使った演出をしている。よりリアリティーを追及するため、血糊を使ったり、人形を叩きつけたり、傷つけたり、爆破していることに驚いた。また映像の一部にはCG技術も採用されている。

 

そうして完成した映像に合わせて日本で声優が声を入れて作品ができあがる。

 

たかが人形劇と侮るなかれ!あえてというなら

 

特撮ハイパー人形劇

 

と言わせてほしい!!

 

何からみればいいの?

シリーズ作品はみる順番が気になりがち。劇場版ではテレビシリーズの過去の物語が語られるのでこちらからがいいのかと考えてしまうのも無理はない。

 

しかしこの作品に関しては制作された順番でみていくのがいちばんわかりやすい!

 

まずはテレビシリーズ第1作「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀(とうりけんゆうき)」からご覧いただきたい。

 

最新作へ期待することは?

さまざまな理由から東離と西幽の往来が可能になり、東西の人びとの交流がすすんでストーリーはますます厚みを増してきている。

 

さらに、魔族と人間とのつながりも見えてきたところで第3期までが終了している。

 

さてつづきはどうなるのか!

 

シリーズを重ねるごとに謎が深まる殤不患の過去。果たして真実は明らかになるのか?

 

また殤不患の相棒、浪巫謠のことが心配。自身の過去について知った彼の今後の動きから目が離せない!

 

はじめは殤不患のことを利用していた東離きっての大怪盗、凜雪鴉(りんせつあ)。

 

近ごろは殤不患を手助けしているが、ほんとうは何を企んでいるのやら。なんと!彼の正体もまだあかされていないではないか!

 

と、いうわけで、最新作であるテレビシリーズ第4期の放送を楽しみに待ちたいとおもう。

 

Thunderbolt Fantasyシリーズの情報はこちらから。

Thunderbolt Fantasy project総合トップ
https://www.thunderboltfantasy.com/

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